ファッションの「消耗品」化と新たな価値の探求
現代社会ではファストファッションの台頭により、消費者はファッションを「消耗品」として捉える傾向が見られます。これにより多大な利便性がもたらされた一方で、大量生産・大量廃棄による環境悪化が懸念されています。経済成長と環境配慮を両立するためには、ファッションを本来の「半耐久財」としての価値に引き戻すことが重要であると研究では指摘されています。
従来のサステナビリティは環境保護や人権保護といった社会的価値を訴求してきましたが、消費者が個人として価値を感じにくいという課題がありました。そこで本研究では、消費者の価値に転換するため、「快適性の持続」という新しいコンセプトが提案されました。

研究で明らかになった消費者のロイヤルティ要因
研究の一環として実施されたStudy 1では、日本人女性600名を対象としたオンライン調査が行われ、ファッションのロイヤルティ要因が分析されました。その結果、快適性が最も強い正の効果を持ち、次いでデザイン性、経済性が続きました。一方で、サステナビリティ(環境保護・人権保護)はロイヤルティに対して負の効果を示し、ファッションが半耐久財であるにもかかわらず、耐久性は有意な効果を持たないことが確認されました。この結果は、消費者がファッションを「消耗品」として捉え始めている懸念を示唆しています。

「快適性の持続」という新しいサステナビリティの提案
Study 1の結果から、ファッションにおいて肌触りなどの快適性が消費者の最も重視する利己的動機であることが判明しました。しかし、衣服は繰り返しの洗濯により快適さが失われやすく、これが消費者が衣服を大切にしなくなる一因となっています。そこで本研究では、「快適性の持続」というコンセプトが策定されました。
このコンセプトは、長期間にわたり快適さを維持する衣服が、機能的に長く使用できるだけでなく、衣服への愛着を育み、結果として衣服の購入量や廃棄量の削減につながるという、消費者価値と環境・人権保護を両立させる新しいサステナビリティの形です。従来の利他的動機中心のサステナビリティとは異なり、消費者自身の価値を起点としています。

コンセプトの魅力度を検証
Study 2では、20歳から60歳の日本人3000名を対象にランダム化比較試験が実施されました。被験者は、「環境・人権保護(従来型サステナビリティ)」、「ファストファッション」、「快適性の持続(新しいサステナビリティ)」の3つのコンセプトシートを提示され、それぞれの魅力度を評価しました。
その結果、「快適性の持続」の魅力度は50.5%と最も高く、ファストファッション(46.2%)および従来型サステナビリティ(34.5%)を統計的に有意に上回りました。この結果は、消費者の利己的動機に基づくサステナビリティ概念が、低価格を武器とするファストファッションをも凌駕する商品魅力を持つことを示唆しています。
エシカル消費の普及には、直接的に環境配慮や消費量の削減を訴求するのではなく、消費者価値の最大の源泉である肌触りなどの快適性が持続する商品を訴求し、それが結果として消費量削減に貢献するという位置付けが望ましいと言えます。

この研究成果は、NECと明治大学商学部加藤拓巳准教授の共同研究として、2026 International Conference on Management, Tourism and Technologiesで採択され、Business and Economics (Springer)に掲載される予定です。
今後の展望
NECは今後も、データと科学的検証を通じて、環境と生活者の双方にとって価値ある製品・空間づくりに取り組んでいくとしています。社会課題の解決と経済性の両立を見据え、企業・地域・研究機関との共創を通じて、生活者に届く表現や意思決定につながる具体的な示唆の導出に挑戦していくとのことです。
関連情報
加藤拓巳准教授Webサイト: https://takumi-kato.com/
サーキュラーエコノミー ブランドサイト: https://circular-economy-business.com/validation/vol001
NEC GX(グリーントランスフォーメーション): https://jpn.nec.com/energy/gx-solution/index.html

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