書籍の概要:ファッション産業の「呪い」を解き、惑星との共存へ
深刻な環境負荷と過剰生産に揺れる現代のファッション産業。本書は、その構造的欠陥を「既製服の呪い」として鋭く分析したうえで、近代ファッション史の批判的検討や、技術哲学者ベンジャミン・ブラットン氏らの「惑星規模のコンピュテーション」といった先端的な知見を援用し、次代のファッションが進むべき移行(トランジション)への道筋を描き出しています。
後半では、Synfluxの独自技術である「Algorithmic Couture(アルゴリズミック・クチュール)」や、株式会社ゴールドウインとの協業による「SYN-GRID」など、事業における実践の背景にある思想や、サステナブルデザインの先にある「プラネタリーデザイン」のビジョンが体系化されています。アパレル関係者やクリエイターに向けた、ファッション産業の次なる世界観と実践知が描かれた一冊です。

本書の主なトピック
既製服の三体問題
19世紀以降の工業化によって成立した既製服システムが抱える構造的な歪みを分析しています。現代のアパレル産業が直面している課題を、複雑に絡み合う「既製服の三体問題(過剰生産・過剰消費・中央集権)」として定式化し、なぜ従来のサステナブル施策が機能しなかったのかを論理的に解明しています。

サステナブルファッションの再定位
1960年代のスペースエイジやカウンターカルチャーを再考しつつ、現在の地政学的緊張下におけるサステナビリティの限界を指摘しています。「惑星の人工化」と「人工の惑星化」が交差する結節点としてファッションを再定義し、「プラネタリーデザイン」という新たなビジョンを打ち出しています。


惑星時代のデザイン戦略
これまでの理論的議論を踏まえ、ファッションビジネスの現場に応用可能な「4つのデザイン戦略(ツインサプライチェーン/ファッションリモデル/マルチステークホルダー/マルチスピーシーズ)」をマトリクスを用いて提示しています。困難な全体への介入を行うための具体的な戦術として、Synfluxの技術と実装事例を解説しています。


出版によせて ── 著者コメント

川崎和也氏(Synflux株式会社 代表取締役CEO)は、本書の刊行について次のようにコメントしています。
「ファッションを学び始めてから14年、Synfluxを設立してから7年を迎えようとする節目に、これまでの思考と実践を一冊の書籍としてまとめることができ、大変嬉しく思っております。何より、本書をかたちにすることができたのは、これまで私とSynfluxに関わってくださった皆様のおかげです。あらためて、心より感謝申し上げます。」
本書は三つのコンセプトによって貫かれているとのことです。
- ファッション史を社会問題や持続可能性の観点から再検討すること:ファッションを俯瞰的に理解したい方におすすめの内容です。
- デザインおよび技術哲学の視点:ファッション産業が直面する課題には、他分野にも応用可能な示唆が多く含まれており、ものづくりに関わるすべての方に読んでいただきたいと考えています。
- ファッション産業をより豊かにするための、ビジネスおよび実装に向けた戦略:海外の多様な事例が収録され、実務に応用可能な方法論も整理されています。
川崎和也氏について
川崎和也氏は、スペキュラティヴ・ファッションデザイナーであり、Synflux株式会社の代表取締役CEOです。1991年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクスデザインプログラム修士課程を修了し、同後期博士課程単位取得退学されています。専門は、デザインリサーチとファッションデザインの実践的研究です。
主な受賞歴には、Kering Generation Award Japanファイナリスト、第41回毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞、H&M財団グローバルチェンジアワード特別賞などがあります。Forbes Japan 30 under 30 2019やWWD JAPAN NEXT LEADERS 2020にも選出され、経済産業省「これからのファッションを考える研究会 ファッション未来研究会」委員も務めています。
書籍情報
書名:惑星のためのファッション 持続可能な社会を実現する、衣服と技術のデザイン戦略
著者:川崎和也
発売日:2026年2月19日
定価:本体2,600円+税
発行:株式会社ビー・エヌ・エヌ
仕様:四六判/384ページ
デザイン:畑ユリエ
ISBN:978-4-8025-1351-7
Synfluxの事業内容
Synfluxは「FASHION FOR THE PLANET / 惑星のためのファッション」をミッションに掲げ、2019年3月の創業以来、自社サービスの研究開発、アパレル・ファッション企業との新商品開発、大学・研究機関との共同研究など、多角的に事業を展開してきました。
近年、ファッション産業では自然環境の持続可能性への関心が高まり、生産や設計の過程で環境負荷を低減する新たなテクノロジーやソリューションが強く求められています。このような市場環境のもと、Synfluxは「ファッションデザインの力で、惑星と人類が生き生きする未来へ」というビジョンを掲げ、機械学習、3Dシミュレーション、アルゴリズミックデザインを駆使したデザインシステム「Algorithmic Couture(アルゴリズミック・クチュール)」を開発・事業化しています。このシステムは、衣服生産において避けられない素材廃棄を最小限に抑える仕組みを提供しており、すでに多くのブランドで導入・商用化が進められています。
国内外でその価値が高く評価されており、H&M財団グローバルチェンジアワード、毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞、Kering Generation Award Japanファイナリストなどの受賞歴があります。
Synfluxについて
会社名:Synflux株式会社
所在地:東京都渋谷区神宮前6丁目9番11号
代表者:川崎和也/代表取締役CEO
設立日:2019年3月27日
事業内容:ファッションデザインのためのソフトウェア開発、循環型衣服設計・製造支援、サプライチェーンのデジタル化、合理化支援


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