ハースト婦人画報社が「サステナビリティ勉強会」を開催、ファッション業界の課題と未来を議論
株式会社ハースト婦人画報社は、6月の環境月間にあわせ、「なぜ、サステナブルは広がらないのか?」をテーマにしたサステナビリティ勉強会をオンラインで開催しました。本勉強会は、商品開発、仕入れ、情報発信、販売など、アパレルサプライチェーン全体の関係者がファッション業界の課題を多角的な視点から捉え直し、明日への具体的なアクションへと繋げることを目的としています。総勢303名が参加し、活発な議論が交わされました。

ファッションサプライチェーンにおける「共に学び、共に考える場」
会の冒頭では、ハースト婦人画報社 社長室 コーポレート コミュニケーションマネージャーの高野由絵氏が登壇し、開催趣旨を説明しました。ファッション業界全体で向き合うべきサステナビリティは、同社およびELLEブランドにとって重要なDNAの一つであると強調しました。

本勉強会のきっかけは、同社のECサイト「ELLE SHOP」がアースデイに展開した「コットン・イン・コンバージョン(CIC)を使用したTシャツのプロジェクト」でした。この企画を通じて得られたコットンのサプライチェーンに関する課題や、サステナブルな商品が広がりにくい背景についての学びを、社内外の関係者と共有する場としたいという意向が示されました。
続いて、ELLE SHOPマーチャンダイジング部の副ジェネラルマネージャーである堀中朋之氏が、スタイレム瀧定大阪とのコラボレーションによるTシャツ企画の背景と、現場でのコストの壁について語りました。当初はコスト増の懸念があったものの、綿花農家を救う取り組みに共感し、企画の実行を決定したといいます。実際に発売すると、生産枚数は多くなかったものの300枚以上が実売され、追加生産に踏み切ったブランドもありました。サステナブルな取り組みに興味を持った新規顧客の購入も一定数見られ、「企業側がコストを理由に足踏みするのではなく、強い想いを持って一歩を踏み出せば、お客様はしっかりと応えてくださるという確かな手応えを感じた」と述べました。

コットンの抱える課題と「3年の壁」
第1セッションでは、ゲストとしてスタイレム瀧定大阪株式会社 ORGANIC FIELD室室長の髙森俊滋氏が登壇し、レギュラーコットンが抱える環境・社会課題とオーガニックコットンの現状について解説しました。

コットン栽培は通常、大量の水使用や化学肥料・農薬の散布により、温室効果ガスの排出、土壌被害、生態系破壊などの環境負荷を引き起こします。また、生産者の経済的困窮、児童労働・強制労働、危険な労働環境といった社会的な問題も深刻であると指摘されました。
オーガニックコットンの普及が進まない最大の原因として、認証取得に伴う時間と経済的なハードルが挙げられました。オーガニックコットンとして第三者認証を得るためには、3年以上化学肥料や化学農薬を使用していない土壌での栽培が必要です。この約3年間の移行期間中、農家はオーガニック農法で栽培しているにもかかわらず、「オーガニック」として販売できず、安いレギュラーコットンとして買い叩かれてしまうのが実情です。これにより、農家がオーガニック栽培に挑戦しにくい状況が生まれています。
この「3年の壁」を解決するソリューションとして紹介されたのが、オーガニック栽培への移行期間中に収穫された「コットン・イン・コンバージョン(CIC:転換期コットン)」です。スタイレムでは、この移行期のコットンを全量買い取り、農家のオーガニック転換を支援する「ORGANIC FIELD®」という取り組みを展開しています。CICとオーガニックコットンは、見た目、品質、耐久性に遜色がなく、服としてのクオリティも加工技術で高い品質に仕上げられているとのことです。認知拡大と継続的な取り組みが今後の最大の課題であると語られました。

消費者の共感を生む「背景にあるストーリー」の重要性
続くトークセッションでは、ハースト婦人画報社 社長室室長兼サステナビリティマネージャーの大竹紘子氏と、ELLE コマースエディターの椿原里咲氏が登壇し、「なぜサステナブルは広がらないのか?」をテーマに議論を行いました。

大竹氏は、同社の「サステナブル消費行動(B2L)レポート」の分析結果をもとに、サステナブル商品に対する価格許容度が通常価格の約1.3~1.4倍である一方、消費者がサステナブルな商品を選ぶ際に重視するのは「長く着られること」や「高品質であること」であると説明しました。ものづくりに携わる人々や生産背景への関心も高く、「サステナブルという言葉だけでなく、その商品が生まれたストーリーや価値を誠実に伝えることが、消費者の“共感”につながる」と述べ、消費者に選ばれるサステナブルな商品づくりのヒントを示しました。
レポートのデプス調査では、「買った後でサステナブルだと知って安心した」、「この購入がサステナブルな活動につながるなら満足度が上がる」といった声も寄せられており、サステナブルな要素が購入後の満足度を高め、ブランドへの信頼やロイヤリティの向上にも寄与する可能性が示唆されました。レポートはこちらからダウンロードできます。
「グリーンウォッシュ」に配慮したコンテンツ設計
続いて椿原氏は、ELLE SHOPで制作された「コットン・イン・コンバージョン(CIC)」特集記事を例に、サステナビリティを伝える際の編集上の工夫を紹介しました。近年、欧州を中心に「グリーンウォッシュ」への規制が強まる中、「オーガニックだから肌に優しい」「エコだから良い」といった誤解を招く表現を避け、事実に基づいた情報発信を徹底したと説明しました。

記事はCICの背景や生産者の取り組みを伝える記事と、商品を試用したレビュー記事の2部構成で制作されました。まず背景を知ってもらい、その上で商品そのものの魅力を知ってもらうという編集方針がとられました。レビュー記事では、エディター自身が商品を取り寄せ、あえてiPhoneで撮影することで、広告的な演出ではなく、商品の自然な魅力が伝わる表現を意識したといいます。その結果、サステナビリティをテーマとしたコンテンツは成果を可視化しにくいと言われる中、ELLE SHOPへの遷移率は通常の記事と同水準を維持し、丁寧な情報発信が読者の関心や購買行動につながることが示されました。
サステナビリティは「共感」へ繋げるコミュニケーションへ
ディスカッションでは、サステナビリティを「伝えること」自体が目的ではなく、背景にあるストーリーや価値を分かりやすく発信し、消費者との共感や信頼につなげることの重要性が共有されました。生産者、小売・Eコマース、メディアなど、立場の異なる関係者がそれぞれの役割を果たしながら情報を発信していくことが、サステナブルな選択肢を広げるための鍵であると改めて確認され、セッションが締めくくられました。

参加者の声
勉強会に参加した方々からは、以下のような声が寄せられました。

社外参加者(ブランド・メディア関係者)
生産現場が想像以上に厳しい環境にあることを知り、自社でできることを考えたいと思った。
購入後にサステナブル商品だと知ることが、安心感や信頼に繋がるという視点が新鮮だった。同梱物の内容見直しを視野に、勉強会の内容を社内で共有したい。
企業の取り組みの情報と製品の発信情報をうまくリンクさせる方法を検討したい。
社内参加者
今まで「オーガニックコットン」について知らないことが多かったと実感。
完璧を求めるのではなく、現在地を誠実に伝えながら学び続けることが大切だと感じた。
コットン栽培を取り巻く課題と、オーガニック農法の意義やメリットを多角的に理解できた。
関連情報
ORGANIC FIELDについて
スタイレム瀧定大阪株式会社が展開する、インドの農家のオーガニック農法への転換を支援し、環境負荷の低減と労働環境の改善を目指す取り組みです。2020年のオーガニックコットン偽装問題を契機に、「信頼できるオーガニックコットンを安定して届けたい」という思いからスタートしました。移行期間の「コットン・イン・コンバージョン」を買い取ることで農家の参入を促し、種の選定から栽培、糸の生産までオーガニックのプロセスで管理することで、トレーサビリティを確保しています。
公式URL:https://www.stylem.co.jp/sustainability/initiative/organicfield/ハースト婦人画報社について
株式会社ハースト婦人画報社は、アメリカに本社を置き、世界40か国で情報、サービス、メディア事業を展開するグローバル企業、ハーストの一員です。1905年に創刊した『婦人画報』をはじめ、『ELLE(エル)』、『25ans(ヴァンサンカン)』、『Harper’s BAZAAR(ハーパーズ バザー)』、『Esquire(エスクァイア)』などを中心に、ファッション、ライフスタイルなどに関する多数のデジタルメディアの運営と雑誌の発行を手掛けています。『ELLE SHOP(エル・ショップ)』をはじめとするEコマース事業も収益の柱に成長。近年はクライアント企業のマーケティング活動をトータルにサポートする『HEARST made (ハーストメイド)』 、データに基づくブランドマーケティング支援を行う『HEARST Data Solutions(ハースト データ ソリューションズ)』を立ち上げるなど、コンテンツ制作における知見とデジタル、データを融合した企業活動を展開しています。またISO14001を取得し、サステナビリティに配慮した経営を実践しています。コーポレートサイト:https://www.hearst.co.jp
X (旧Twitter):https://x.com/hearstfujingaho
ハースト婦人画報社のサステナビリティに関する取り組み:https://www.hearst.co.jp/company/sustainability/

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